お父様の話はこうだった。
最近、お父様の経営している会社と取引をしている御之グループの奥様と、この前偶然顔を合わせ話をしたところ、ついお酒が入りそういう話になったという。
…だからお母様は、お父様に「お酒は飲むな」ってあれほど言ってたのか。
お父様、お酒飲むとやたらと饒舌になるもんなぁ。
「失礼ですがお父様、私あまりよく知らない殿方とお見合いするのは、少し…」
戸惑いがちに目を伏せれば、それなら、とお父様が言葉をつむぐ。
「お前と同じ高校生で、お前の好きな“ 王子様 ”のような子だと聞いている。
どうだ、とりあえず会ってみないか」
『王子様』
その単語に私の胸が高鳴ったのは確か。
「…会ってみるだけなら……」
なんて、簡単に流されてしまう私も私なのだろうなぁ。
小さくため息をついた。

