ようやく桃花が警察に行く気になったらしい。散々煽った結果が出て、ひと安心だ。
きっと来るだろうと貴重品倉庫で待機していれば、警察官と桃花のやり取りが聞こえる。オレの話が聞きたいという流れに、やはりと寝たふりをして皆を迎えた。
桃花の美徳でもあり欠点のひとつが、自分の言いたいことを抑えてしまう癖だ。大人になれば言いたいことをストレートに言えば角が立つのは当然で、ある程度の配慮や気遣いは必要になる。 だから、桃花のそれは言いたい放題の人間よりはましとは思う。
思いはするが、時として主体性がない、流されているだけとも評されかねない。
相手の言うことに何の反論もせず、唯々諾々と従い理不尽な仕打ちに耐える。大人になればよくあるケースだが、それは時と場合によっては毒ともなりうる。
(オレが見たいのは、こんな流されっぱなしの桃花じゃない。雪の日に見た、あの明るく生き生きとした表情。生きることを知っている彼女だ)
戦え、と桃花を挑発した。冷たく突き放されたと感じて嫌われている――そう思われても仕方ないほどに。
ただ、甘やかしたいわけではない。
籠の中に入れて真綿にくるむように甘やかし、なにものからも護るのは簡単だ。嫉妬から彼女を閉じ込めたいと考えたこともあったが、それでは桃花本来のよさが消えてしまう。
自分の足で立ちあがって、戦いに勝て。手助けはするが、あくまでも桃花本来の強さで立ち向かう。
ヴァルヌスの王宮に迎えるなら、その程度のことすら出来ないようではダメだ。オレの愛情や庇護だけではいずれ限界が来る。己の意思で立ち、そして勝ちを手にする。最低限それが出来るようになってほしい。それだから、何度も彼女へ辛辣な言葉を放ってきた。



