Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




葛城家との挨拶の最中、桃花の対応は及第点だった。
本来ならばきちんと名乗らせるべきではあっただろうが、そうなれば昭治が彼女を放っておくとは思えない。


桃花は余計な発言などせず、それでいてきちんと愛想を忘れずにいてくれた。控えめな笑顔で、しっかりとパートナーの役割を果たしてくれる。


もっと場慣れしていないと思ったが、経済界の重鎮を相手に堂々たるものだ。物怖じせずにいられるなど、案外度胸があるらしい。最愛の人の肝の座りっぷりに、思わずこちらも笑顔になる。


「よくやった、それでいい」


桃花を褒める言葉は、驚くほど自然に出てきた。これだけの規模の公的な場で、満足な対応をしてくれた。ヴァルヌスの王子妃――将来の王妃としても有望だ。


それからは桃花が何をしても可愛らしくて、彼女に身を寄せてみたり軽いスキンシップをしようと目論み、失敗したりと忙しい。彼女が多少なりともこちらを意識してくれている、と分かって叫びたいほど嬉しかった。


このまま、もっと互いを知って仲を深めてからきちんと告白する。このホテルは庭園が見事だから、イルミネーションの幻想的な雰囲気の中で彼女に想いを告げよう。 そう算段を取りながらいたのだが。


どうしてか楽しげだった桃花の笑顔が強張り、態度がよそよそしくなっていった。彼女が先ほど向いた場所へ視線をやれば、招待されたであろうマリアが目に入る。


マリアを見たから態度が変わった? どうしてだか、はその時の自分にわからなかった。