葛城グループ総帥の長男――葛城家次期当主である昭治に挨拶をした時、強引に娘のアピールをされて辟易した。
ヴァルヌスの話題を絡めて2人きりにさせようとか、わざとらしすぎてため息しか出ない。
娘は知らないだろうが、葛城家は今回の交換留学のバックアップを担っている。オレがヴァルヌスの王子と知っていて、娘を妃にとの思いがあるに違いない。
昭治は何度も娘と引き合わせようとしたが、ことごとく断っていたら外出先で“偶然”会う機会が増えた。おそらく、侍従長であるアルベルトの思惑も絡んでいるだろう。
日本有数であり世界的グループ企業を擁する葛城家。その当主であり総帥の娘ならば、貴族の令嬢と同じ。下手な女に捕まるよりは、とアルベルトも同意したに違いない。
(まったく……アルベルトも一人で帰れと言ったり、女をあてがってみたり。忙しいものだ)
だが、どんな名家の娘だろうが、どんな美女だろうがオレの心には響かない。
オレには桃花しか見えないのだから、他の女は全て同じだ。全てが揺さぶられるのも、全てを捨てて悔いがないのも、全身全霊を賭けて愛せるのも桃花しかいない。
だが、だからといって自分の義務を放棄したり責任逃れをするつもりは毛頭にもなく、王子として将来の王太子、やがては国王となるための責務は全て全うする。
桃花に相応しい男となる為に、そして彼女を周囲に認めさせるために、最低限それはこなさねばと気を引き締めた。



