どうやら水科姉妹は幼なじみの親の車で送ってもらったらしい。相変わらず父親は不在のようで、何だか腹が立った。


妹の桜花は恋人に手を引かれ車から降り立った途端、あっという間に周りに人だかりができて。姉の桃花は反対側のドアから出てひっそりと車の陰に立っている。


桜花は派手目の美人で、オレンジ色のキャミソールに白いショートパンツにラメ入りのサンダルと目立つ格好。中学生なのに大人のような長い手足にスタイルの良さを惜しげもなく晒していて、メイクを施した輝くような笑顔が夏の青空に映えるひまわりのようだった。 きっと会話も楽しく明るく、人好きのされる性格なのだろう。初対面の人間ともあっという間に打ち解けていた。


とはいえ、私には何の関心も持てなかった。桜花がどれだけ美人だろうが、桃花の妹という関わり以外何の意味もない。


私の目は、木陰でひっそりと咲く桃の花のような桃花にしか行かなかった。


彼女は人の群れから離れて白いワンピースを着ていたのだけど、それは出会いのあの雪の日を思わせる。艶やかな黒髪を後ろで束ね、化粧っけがない地味な桃花は誰も関心を持たなかったけど。 それは私にとってありがたい。


(い、今のうちに……話を……)


心臓をバクバクさせながら、彼女のそばに行く機会を窺っていた。