雪菜からそんな内容のメールをもらい、思わず自室で苦笑いをこぼす。


あの彼女のことだ。きっと、自分が納得するまでは私に会わないだろうし、会いには来ないだろう。


忘れられないように頻繁に日本へと考えていたが、それは改める必要があるかとは思ったものの。何だか理不尽な気もした。


(私が雪菜の要求を飲むのに、私も雪菜に要求をしても罰は当たりませんね)


それでこそ、フィフティフィフティ。イーブンというものだ。


“わかりました。ですが、顔を見ることは構わないでしょう?あなたのリクエストに応えるならば、私にも何かのご褒美がなくては損です”

“そんなもん要求すんな! 男だろ”

“男だからこそ、衝動的欲求というものが押さえられないことがあります”

“そこは人間、理性でカバーしろ!”

“なけなしの理性を磨り減らせば、長期間あなたに逢えなかった反動で、次にお会いした時ベッドに組み敷いても構いませんならば結構ですよ”


雪菜とメールでそんなやり取りをすれば、スマホがしばらく沈黙した。そして、丸一日経過後、雪菜から届いたメールは。


“わ~ったよ! 好きなだけ見にくりゃいいだろ! ただし、だ、男女関係は一切無しな! 絶対だぞ!!”


苦渋の決断をしたらしい雪菜の表情が安易に想像できて笑ったが、同時に安堵もしていた。彼女が男女関係をまだ拒むことが。


私は、そういったことは正式に結婚後と考えている。愛すれば身体を重ねるが当然な世の流れからすれば古めかしいだろうが、私にすれば純潔は大切なもの。


軽々しく応じない貞操観念の高さに、また彼女に惹かれるのを感じた。