「そのようにお怒りになるより、せっかくですから楽しんでください」
迎えに来たハイヤーが駅前広場の車止まりに横付けされ、私は開いたドアを軽く押さえて雪菜へ促す。
「どうぞ、お乗りください」
「……ど、どこに連れてくつもりだ?」
「お話ししましたように、郊外の別荘です。……と言いましても、つましい一軒家のようなものです。大層な建物ではありませんよ」
警戒心を露にした雪菜ににっこりと微笑むと、スマートフォンにその写真を表示させて彼女へ見せる。最初こそ怪訝そうではあったが、画像を見た雪菜は目を輝かせた。
「え、なんだこれ? めっちゃカワイイ! けど……ホントにあたしがお邪魔して良いのか?」
「ええ。あなたの為に既に準備を整えていますから、今取り止めてしまえば準備した者たちの労力は報われなくなってしまいますよ?」
やんわりと労働者の存在を匂わせれば、やはり雪菜は無視できないのかううっと唸る。彼女の優しさに漬け込むのは卑怯かもしれないが、多少強引で無ければ雪菜はすぐに諦めてしまおうとするだろう。だから、後悔はしない。
「わ……わかったよ! お世話になる。よ、よろしくな」
かなり渋々ではあったが、雪菜はハイヤーに乗り込んだが。途中から外の景色に歓声を上げ、そのはしゃいだ様子に連れてきて正解だと強く感じた。



