「え、うさぎもいる?」
雪菜はキラキラとした目で私を見上げる。まるで無邪気な幼子の表情に、完全にやられた私はしばらく動けなかった。
「あるべると~どしたの?」
むにっ、と頬っぺたを摘ままれて、ハッと我に返った。いけない、意識がどこか別世界へ飛びそうになった。そこまで雪菜の無意識な誘惑の破壊力はすさまじい。
「……もちろん、うさぎは雪うさぎがいますよ。雪が降ればそれは見事な白いふわふわの毛になります」
「ほんと!? 見たい! 雪うさぎ見たい~他の動物も見たいな~」
ほにゃ、と奇妙な声を上げながら雪菜は私のお腹に頭を擦り付ける。どんな拷問だ、これは。
「動物、裏切らないし差別しないもんね~いいな~行きたい……あるべると、連れてって」
「いいですよ。あなたが良ければ今すぐにでもお連れしましょう」
「ホントにぃ~? 嬉しいにゃ~じゃあ連れてって……にゃあ」
雪菜はそのままむにゃむにゃと言いつつ、まぶたを閉じる。私の膝に顔を乗せたまま。しあわせそうな表情で……。
(よし、言質は取った)
私は早速スマホを取り出すと、外務省とヴァルヌスの大使館へと連絡を入れる。
通常日本でのパスポート取得には申請して10日前後必要だが、今回は特例として通させていただこう。大使も外務省も渋ったが、もっともらしい理由とカイ王子の名前で何とかなりそうだ。
王子には後で言い訳するとして、たった2日でも雪菜に今の美しいヴァルヌスの自然を見せたい。そんな強い思いが私を動かした。



