「あるべると~あったかい、にゃは……」
雪菜は泣きながらも、私の腕の中で安心しきった蕩けそうな笑顔を見せる。……どれだけ心臓に悪い。普段さばさばして色気の欠片もない彼女が、色づいた頬で可愛らしく笑む。常日頃から色を撒き散らし媚びる女より、その破壊力の差は歴然。
どんな拷問だ、と思わずドイツ語で呟いてしまっていた。
「あったかい~しあわせだよね~ひとりだと寒いもん……イヤだよねえ」
「……犬がいるんじゃないか?」
「ワオンのこと? あいつ、気まぐれだから~寒い日は来ないの。うち、暖房なくて暖まれないから。よそのおうちでぬくぬくしてる~」
擦り寄ってくる雪菜だが、今は真夏で暑苦しくないのかとぼんやり考える。私は相変わらずスーツ姿であるから、雪菜との接触が少ないのは残念ではある。
あのモコモコの謎の毛玉は一応名前があるのか、とどうでもいいことを考える。何かに気を逸らさねば、おそらく今の私は無防備な雪菜に無体なことをしてしまいそうだ。
「ひとりはいやだよ……あたし……生まれてすぐ要らないって捨てられて……ずっと独りぼっち。これからも誰も必要とされなくて……独りぼっちのまま何十年も生きて独りぼっちで死ぬのかな……何も残せずに……何も意味もなく……嫌だな……怖い……独りは……もう嫌だ」
ぽろぽろと涙を流す彼女は、ギュッと私のシャツの胸元を握りしめる。そのまま静かに涙を流し続けた。



