以前もお世話になった雪菜の住処であるアパートへ足を運ぶ。
「ワオン!」
玄関を開けた瞬間、謎の白い毛玉に襲われ押し倒されたのも同じだ。
「あ、こら。イヌコロ! 人にそうするなっていつも注意してるだろ、こいつめ」
「ワオン!」
雪菜はべろべろと私の顔を舐める犬らしき生命体を抱き上げ、ツン、と額(らしき部分)を指先でつつく。ぴょこぴょこ動くあめ玉大の丸いものは……尻尾だろうか?
「……犬の細菌に汚染された……」
「なにアホなこと言ってんだ? 洗えばすむ話だろ。手洗いはそこ! バスユニットだけど気にすんなよ? ……って。あんたらヨーロッパの人じゃそういうの当たり前か」
あはは、と豪快な笑い声を上げた雪菜は、ほれ! とタオルを放り投げてきたから受け取る。ずいぶんと使い込み、ボロボロの代物だ。これだけ生地が硬いと肌が傷つかないのか?
「新しいタオルはないのか?」
「ないよ。言っとくけど一番いいの使わせてやるんだぞ? そりゃあんたからすりゃボロかもしんないけど、一枚300円もした高級品なんだ。ありがたく使いなよ」
ひらひらと手を振りながら雪菜はキッチンらしい場所で買った材料を広げるが。部屋とキッチンが一緒になった間取りが衝撃過ぎた。ユニットバスのドアがすぐ横にある構造も。
なんと狭い家だろう。物置小屋の間違いではないのか? とベッドが置いてある部屋を眺めながら思った。



