「好きなだけ注文してください」
「は?」
雪菜は一瞬動きが止まり、訳がわからないという顔をしていた。もしや私の提案に心を動かされたか? と仮定して話を続ける。
「あなたはコーヒーしかお飲みになってないようです。既に昼食の時間になっていますから、このお店でよろしければお好きなメニューを注文してください。お詫びにお支払いはわたくしが致しますから」
「…………」
雪菜は静止したまま。やはりいろいろと考えているのだろう。あまり裕福と言えない彼女には魅力的な話のはず。そう考えてはいたが。
「この、ばかたれ!」
ゴツン、と雪菜の拳が脳天に直撃したせいか、私は椅子ごと後ろに倒れて……
足が痺れていたお陰でほとんど身動きが取れなかった。
「ったく、何度言ったら解るんだ、あんたは! そうやって金で解決しようとすんなって言っただろ!」
どうやら金銭絡みであったことが彼女の逆鱗に触れたようだが、それ以外の方法などすぐには考えつかない。謝意を示すのに金銭で表すのは普通だし、最も解りやすく解決しやすい方法ではないのだろうか?
だとしたら、雪菜は一体何を求めているのだろうと不思議に思えば、顔を真っ赤にした彼女が睨み付けてきた。
「ちゃんと、謝ったことがあるのか? 相手の目をしっかり見て“ごめんなさい”って。あんたに足りないのは、そういった誠実な態度だよ」



