『申し訳ありませんが、私は子きつねになるつもりはありません。彼女以外は考えられない。もしもあなた方がどうしても許せないとおっしゃるならば致し方ありません。私が永住権を取り、そちらへ帰化するのみです』
私はなるべく柔らかな笑顔を浮かべながら、断固たる口調で自分の最低限の条件を提示した。両親がそれ以上余計な口を差し挟めないように。
――ただ、黙って見守って下さればいいのだ、と。
『アルベルト……』
『今のところはこれ以上お話することはありません。では、私は仕事に戻りますので失礼いたします』
なるべく丁寧に挨拶をした後、ダイニングルームを後にして一旦自室へ戻る。ベルンハルト城へ戻るため、メイドが用意した新しいスーツに袖を通す。とあるブランドのフルオーダーメイドだから、ぴったりと体に馴染む。
お世話に、とメイドが何人か部屋に入ろうとしたが拒んだ。まだ若く健康なのだから、着替え位は一人で出来る。
学友の中にはいかにもひけらかすように、すべてを使用人任せにする者もいたが。馬鹿らしいことだ。
にしても最近、私に近づこうとする女が多く辟易する。父がいずれ私に爵位をと明らかにしてから尚更。だが、そんな打算的な女はこちらから願い下げだ。公務や仕事上ならともかく、プライベートでまで高慢な女の相手などしたくもない。
家に帰るならば、ホッとできる空間が必要だ。そう考えて納得した。
――私が雪菜に惹かれた理由を。



