『ひとつ、安心していただきましょう。彼女はアジア人です』
『!!』
その時の両親の顔は、言っては何だが見ものだった。母は先ほどより目を丸くし、父に至ってはぱくぱくと金魚のように口を開け閉めしている。両親の間抜けな顔に、本気で吹き出しかけた。
先ほど以上のショックを受けた父はしばらく立ち直れなかったようだが、やはり母よりはいち早く正気に返った。
『あ、アジアの令嬢かね? もしや日本の皇族方か?それともタイの王族か』
『まさか。そのようなおそれ多い』
クスリ、と私は笑った。父と母の旧態依然した旧すぎる思考に。それと同時に、雪菜には後ろ楯が必要と痛感する。
あの女にはマリア嬢とあの世界的デザイナー、それと高宮のバックアップがある。カイ王子の縁故ではあるが、それぞれがあの女に惚れ込んで積極的に関わった結果だ。
だが、雪菜には何もない。
カイ王子の伝(つて)を使うのは癪だが、私が日本で築いたのは必要最低限のネットワークのみ。縁故で頼れるものはほとんどない。
カイ王子の留学中に私が日本で過ごしたのは1年のうち数ヶ月。後はヴァルヌスで過ごしていたことが仇となったか。
(雪菜にはしかるべき後ろ楯を用意する必要がある……もしも彼女が望むならば、だが)
既に、私の中では様々なプランが出来上がっていた。
雪菜はしきたりや窮屈さを嫌う。ならば、川沿いの郊外へ新しい家を建ててそこへ住まわせればいい。彼女はきっと自然豊かな場所が似合うに違いない。



