両親にとってよほどショックな話だったのは想像に難くない。
私以外の家族は全員ヴァルヌス国民と結婚している。先代やその前もそうだったが、オーストリア·ハンガリー帝国時代には若干例外も混じる……とは言うものの100年も前の話だ。
私が知る限り、一族で国際結婚をした人間はいない。頑固な迄に自国の血に拘り続けているのだ。そんな保守的な人からすれば、息子が異国人を恋人にしただけでも、相当ショッキングな話だろう。
『異国……と言ったか?』
『ヴァルヌス国民ではありません』
流石は公爵と言うべきか。いち早くショックから立ち直った父が私へ訊ねてくる。それゆえ、肯定の意味で返事をした。
『……ならば、オーストリアの令嬢かね? よもや、カイ王子の幼なじみのマリア嬢ではあるまいな?』
幾ら思考に窮したとはいえ、父が出したあり得ない話に苦笑いをするしかない。
確かに、マリア嬢はオーストリア名門の出身。世が世ならば大公妃に立ってもおかしくない身分と血筋と器量がある。
だが、父と母は想像すら出来まい。マリア嬢は幼い頃に将来の相手を自ら定め、異国へ嫁ぐためにたゆまぬ努力をしているのだと。
そして、カイ王子とて異国の女性を迎えるために宮廷改革を始めたのだと。タヌキを放逐し膿を出しきる努力は、全てはあの女のためなのだ。未だ忌々しいが、カイ王子を変えたのがあの女と言うならば認めるしかない。
そう、考えられるようになったのは雪菜のお陰だ。
皆、想いを叶える為にとてつもない努力をしている。ならば――私だとて、するべきだろう。
私は、両親に顔を向け微かに笑んだ。



