『で、どんなお嬢さんなのかしら?』
母の声が年甲斐もなく浮き立っているのは気のせいではないだろう。今まで浮わついた話に無縁であった息子が見初めた女性ならば、さぞかし素晴らしく家柄の良い女性であろう。そんな期待が透けて見える。
正直な話、ここで雪菜のことをありのままに明かしても理解されはしまい。むしろ猛反対を受けて頑なになるだけだろう。
ならば、情報は小出しにした方が得策だ。今は匂わせる程度でも十分な効果になる。
『残念ながら、彼女はとても大人しく恥ずかしがり屋なのです。ですから、今しばらくは私に任せ見守っていただけると有難い』
『そうなの……でも、どんなお人かだけでも話してくれないの?』
『そうだ。仮にも貴族間の縁談を断るのだから、それなりの理由を用意せねばならない。よもや、表沙汰に出来ぬ身分の相手ではあるまいな?』
母に続いて父が出した言葉に、内心苦笑いをせざるを得ない。
(これからの時代に、身分ときたものだ。古いイデオロギーに縛られた思考ほど、みっともないことはない)
だが、今それに反発し歯向かうのは得策ではないだろう。ならば、と私は口を開いた。
『実は、私が迎えたいのは異国の女性なのです』
『えっ?』
母の目がまん丸に見開かれ、不謹慎ながら吹き出しそうになったが。何とか堪えて生真面目な顔を繕った。



