私は思わず眉をしかめてしまっていたのだろう。お母様から『なんて顔をなさるのですか』と注意を受けてしまった。
『アルベルト、お母様はおまえが心配でならないのだよ。それに、末っ子だからと今まで自由にさせてきたが、公爵家の一員としてそろそろ自覚を持たねばな。30近くで独身の貴族など、信用もされなくなるぞ?
しかるべき相手と身を固めねば、いろいろと問題がある人間なのではと勘繰られる。
おまえが今の仕事を続けるにしろ、それは不味いのではないか?ひいてはお仕えするカイ王子のイメージダウンにも繋がるのだぞ』
『…………』
お母様のフォローをするお父様から痛いひと言をもらってしまった。
確かに、未だに閉鎖的なヴァルヌスの宮廷では、いい年をした貴族で独身だと評価が下がる。結婚は一種のステータスであり、して当然の“常識”なのだ。
結婚相手を養うだけでなく、相応の支度をして相手をどれだけ豊かに暮らさせるか。それが直接妻や夫の評価にも繋がる。
要するに、結婚出来ない=人間的に問題や欠陥がある。または財産がなく落ちぶれた、と評価されてもおかしくはないのだ。
この21世紀という現代でなんとも古めかしい旧態依然とした考えだが、未だに古めかしい血筋や権力ばかりに拘る懐古主義な年寄りが多いからには仕方ない。
もっとも、カイ王子と宮廷改革を推し進めたなら、こういったご長老方には引退いただくが……。
今はどうやり過ごすかが問題だ。
(私には結婚の意思などないが……どう言えば納得して下さるか)
どうしてかその時は意固地になって、縁談は断ろうと考えていた。



