「そうか」
私はそれだけ言うと、ラムネをまた口にした。今は下手な言葉など要らない。ただ、大切な思い出を持つ者同士、ほんの少し童心に返るだけ。
目の前に流れる穏やかな流れの川の水面は太陽の光でキラキラと輝き、せせらぎの音がここまで聞こえてくる。
そういえば、と私はもう一つ思い出す。
ヴァルヌスの首都には市街地を分ける川があるが、幼い頃はそこに興味があった。生物図鑑の水棲生物が実際にいるのか、この目で見て確かめたいと切望したものの。カイ王子に近侍しているうちに、忙しくていつの間にか忘れていた。
よし、と私は思い切って靴と靴下を脱ぐ。カメラを手に流れへと歩いていけば、「あ! 待てよ」と雪菜が慌てて追いかけてきた。
「急にどうしたんだ? 裸足になったりして」
彼女の問いかけには答えないまま、私は慎重に斜面を降りて足を怪我しないよう注意を払う。なるべく浅い流れを見つけて、そのまま飛び下りた。
「お、おい!」
焦る雪菜の声が聞こえた後、続いて後ろから大きな水音が響いた。
やはり、彼女はついてきた。見知らぬ私でも心配して、危険が伴う行動でも躊躇わない。
(まったく……誰かに似てひどくお節介ですね)
川面に写った私の顔は微苦笑をしていたが、それを踏みつけてザブザブと川の中を進む。
その後はなるべく動かず生き物がいそうな場所を探す。やがて、小さな魚が優雅に泳いできた。
大きさは10センチほどだろうか。銀色のうろこに青色やピンク色が浮き上がって美しい。尻ヒレが大きなその魚を撮影しようと、慎重にカメラを構えたが。
ほんの少し動いただけで、あっという間に泳ぎさってしまった。



