「だけどさ」
雪菜は空を見上げるのを止めて、ふっと表情を和らげる。
「確かにあたしの生い立ちとか育った環境は悲惨だったさ。けど、あたしは自分が不幸だったとは思わないよ。
たった1人……いや、もっとか。案外たくさんの人に気にかけて貰えたからね」
「先ほどの話と矛盾がないか?」
当然の指摘をすれば、雪菜はプッと噴き出した。
「そりゃ、そうだけどさ。ま、話を聞きなって」
バン! と背中を叩かれたせいか、苦しくなって噎せた。
「あはは、ごめんごめん。あんたにもさ、菓子屋の思い出があるように。あたしにもあるんだ……小銭を握りしめて駄菓子屋に行ったことが。
ちょっと遠いお店だったけど、忘れられなくて足を運んだこともある。
そしたらさ。憶えててくれたんだよね、おばあちゃんもお姉さんもみんなも。
おばあちゃんは口が悪いけど、スッゴい面倒見がいい人でさ。あたしが意地悪されて泣いて店に行った時……寝てなって布団を敷いた和室に放り込まれたんだ。
そんで、夕御飯まで一緒に食べさせてくれてね。そこで店番してるお姉さんも優しくて、すごい泣けたけど。少なくとも、あたしには心配してくれる人がいるってわかって。とっても心強かったな」



