「あの部屋は?」
思わず、訊ねてしまった。私が目覚めた部屋は、シンプルだがセンスのいい品でまとめられていた。100均のアルバイトだけで賄えるものではなかったはずだ。
「ん~あれはね……あたしの願望やあこがれを形にしただけなんだ」
雪菜は膝を立てるとそれを両腕で抱え、空を見上げる。
「あたしさ、ずっと施設で暮らしたけど。あまり幸せを感じる場所じゃなかった。3畳のひと部屋にガキとはいえ3人詰め込むようなところなんだぞ?
食事の支度や身の回りのことは、どんなにちっこいガキでも自分のことは自分で。
一歳のガキでも、食材渡されるだけなんだぞ? 炊いてない米やニンジンやキャベツの切ったのや味噌だけ渡され、どうしろってんだよ。
風呂だって入らせてもらえなかったから、仕方なく水で洗うけど。1日1分以内しか蛇口に触らせてもらえない。
着替えなんてなくてさ。いつも薄汚れたボロを着てた。
誰かお偉いさんが訪問したり外に出るイベントの時だけ、綺麗な服を着せてもらって、風呂に入れて。あったかい飯ももらえたけどさ。あくまでも表向きをとり繕うだけで、過ぎれば元の木阿弥さ。
職員なんざ所長と事務員1人と短時間アルバイトの2人。それが全てだったんだ。
つまり、補助金やら何やらが目当てのがめつい施設に放り込まれ育ったんだ。
だから、小学校にあがったら施設に内緒で新聞配達して必死に金を貯めて。勉強も頑張って。高校は全寮制のレベルの高いとこにいったけど。どんなに頑張っても落ちこぼれていってさ……。どうにか卒業したけど、結局何がしたかったのかわからなくて。せめて、自分の居場所を持とうとバイトを頑張って。分不相応な家具やらインテリアで部屋を飾ったってわけさ」



