そこで、生まれて初めて買い食いという体験をした。
不自然なまでに色とりどりのクリームやチョコがトッピングされたクッキーやドーナツ。その場で揚げてもらえるパンや惣菜。
あれこれ時間をかけて選んだお菓子やパンを手に、店先のベンチに腰掛ける。地元の子ども達の真似をして早速かぶりついたカイ王子が、『おいしい!』と目を輝かせた。
『アルベルト、すごくおいしいよ!』
『それはよかったですね』
『アルベルトも冷めないうちに食べなよ』
それだけを告げたカイ王子は、次々とパンや菓子を平らげる。私は庶民のように手のひらから直接食べるという行為にどうも躊躇があった。
しかし、突然口の中に熱いものが突っ込まれた。
『早く食べないとぼくがもらっちゃうよ』
シレッとした顔でカイ王子はそう言うと、再び手にした揚げパンにかぶりつく。どうやら彼の揚げパンをくれたらしい……渋々口にしてみれば、その美味しさに驚く。
揚げたてのフライやパンがこんなに美味しいなど、今まで知らなかった。
ちょうど夕食前で育ち盛りの子ども。空腹を前にこんな魅惑的なものを出されてガマンしきれるはずもなく。ホットジンジャーエールを手に、夢中になってばくばくと食べる。
気づけば、紙袋はあっという間に空になっていた。
それから、物足りなさを感じた私たちは再び店内に入りお菓子を選ぶ。今度は日持ちする袋入りのお菓子を手にした。
いわゆる、スナック菓子というものだ。
『アルベルト、今日のことは内緒だよ。2人だけの秘密だからね』
『わかっておりますよ。私も叱られたくはありませんから』
苦笑いしながら、2人で飲んだサイダー。それは、忘れかけた思い出に直結する懐かしい味だった。



