ヴァルヌスにも日本ほどではないにせよ、菓子屋がある。
日本の駄菓子屋とは違い客層が幅広く、大人が好む菓子や軽食にちょっとした雑貨に酒類も置いてある。
店の前には大概椅子が置いてあり、買ったものをそこで食べるのも地元の子どもたちの楽しみらしかった。
私たちが訪れた菓子屋はパンや手作りの菓子がメインのようで、ズラリと並んだそれらは比較的手が届きやすい値段がつけられていた。
学校が終わった時間帯だからか、店内は他の子どもたちで賑わいを見せる。
幸い私は万が一のためにとポケットに忍ばせておいた紙幣がある。カイ王子の買い食い程度ならば問題ないだろう。
せっかく城を抜け出したのだから、一般的な子どもなりの過ごし方をカイ王子に体験させたい気持ちが強かった。
無論、子どもたちの楽し気な様子に私だとて楽しみになっていた。
今まで車窓越しでしか見たことがないこの場所に、自分が立っている。
興味深く運転手に訊ねても、お坊ちゃんには関係ありませんよ、といつもいつも教えてもらえなかった。
だから、大人たちを出し抜いた嬉しさから、徐々に気分が上向いていった。



