Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




将来の国王となるべく帝王学を学ぶカイ王子は、分刻みの過密なスケジュールをこなしていた。 わずか5つの子どもにそれは相当な負担だったのだろう。

春から夏にかけての時期だと記憶している。カイ王子が近侍している私へ、ひとつの提案をしてきた。


“昼休みに城を抜け出して下町で遊ぼう”

“何をおっしゃいますか。あなたは将来の国王陛下となられるお方。そのように今から気を抜いてどうしますか?”


カイ王子のとんでもない提案に、私は淡々とそう返した。その時八歳だった私だが、既にカイ王子を仕えるべき主人として認識していたように思う。


だから、彼が道を外さないように。周囲の期待に応えられることを最優先に考えていたのだが。


それはきっと、幼子には理解し難い感情だろう。まだ5つの子どもに大人の細かな事情を察しろとは酷な話だ。


案の定、カイ王子もしばらく意味がわからないようで目を瞬いていたが。やがて沈んだ顔つきで俯き、ぽつりと呟く。


『そっか……アルベルトも気詰まりかなって思ったんだけど』


うっ……とその時の私は言葉に詰まった。


なにせカイ王子は私より3つも年下で、まだまだ小さく華奢な体つき。ちっちゃい体を震わせながら、全身で悲しいと訴えてくる。そこに、飼っていた犬のしょんぼりと尻尾を垂れた姿が重なる。


そして、いつの間にか私は無意識に“一時間だけなら”と、協力を約していた。


いったい、私は何を血迷っていたのか。


気がつけば、城下町の街並みの中にカイ王子と2人で立っていた。