「そら、それ飲みなよ。喉が渇いただろ」
雪菜がラムネを指さしたからではないが、確かに水分補給は必要だ。既に開封された瓶の飲み口に口をつけてみる。
炭酸を含む清涼飲料水独特の鼻を突き抜ける爽快感。口にしたのは一体何年ぶりだろうか――そして、その味に。どうしてか幼子だった時代の記憶が甦る。
まだ、カイ王子がマリア様と知り合う前。既にその頃から近侍していた私は、両親からは決して友達にならぬように言い含められていた。
“あの方とあなたは身分が違うの。私達がお仕えする、将来は国王陛下になられるべきお方。親しくしてはならないけど、なにかあった時には身を挺してあなたがお守りするのですよ”
“はい、母上”
まだ7歳の子どもに言い聞かせる言葉ではないかもしれない。だが、母上も父上も真剣だった。当時は4歳幼児に過ぎなかったカイ王子が、将来唯一の王位継承者になることを見越していたのだろう。
当時7歳の私は幼児ながらある程度の武術を教わっていたし、厳しい教育を受けて小学校高学年程度の勉強ならば理解していた。だから、カイ王子が困った時にはさりげなく助ける。
あまり活発でなかったカイ王子だが、外出は好きでよく草原でスケッチしたりぼんやりしてた。
だが、やはりカイ王子だとて一人の子ども。押さえられない好奇心に突き動かされることもあった。



