「こらこら、まだ休んでいきなよ。本調子じゃないんだろ?」
「そうだとしても、これ以上無駄な時間を浪費する余裕はない」
そして、私はポケットのケースから一枚の名刺を出すと女の手に押しつける。
「今まで掛かった費用及び、その対価に関して請求があればここへ連絡しろ。私のIDを告げればわかるようにしておく」
私が当然のことを話しても、女はポカンとした顔で名刺を見てる。やはりいろいろと抜けている、とそれだけ思って女を突き放した。
日本円で10万も用意させれば十分だろう。そう考えながら連絡を入れるためスマホを弄りだした私の耳に、ビリッと裂くような音が聞こえて思わず振り向く。
すると、何を考えたか女が私の渡した名刺をビリビリに破いてこちらへ投げ捨ててきた。
「バカにすんな! あんたを助けたのは、お金が欲しかったからじゃないよ!!」
正直な話、は?と女の耳を疑った。
人間、得をするなら貰えるものがあるなら、喜んで貰うものだろう? 少なくとも私が見てきた女は大抵そうで、例外は今は亡き王妃陛下にヤヨイ妃とマリア様だけだ。
他の女はほぼ例外なく贈られたものは喜んで受け取る。母上や姉上がたも同じで、私にはそれが当たり前なこと。
この女は、なぜ怒り出したのだ? 私にはさっぱり意味不明だった。



