「気がついた? ……って、起きちゃダメでしょ! あんた顔が真っ青なんだから、まだ寝てなさい。ってか寝かせる。ポピー」
「ワオン!」
どすっっ
「ぐっ」
再び腹部にずっしりとした重みを感じ、その反動で体が後ろへ倒れベッドに沈み込んだ。
(一体何なんだ?)
意識を失う前にも同じような状況に陥ったことを踏まえ、腹部に存在するずっしりとした重みの物体が私を襲ったのはおそらく2度目。
目だけでそちらへ視線をやれば、私の腹部に乗っかってたのは真っ白の毛玉としか言い様がない謎の物体。体温があることから生き物と思われるが、顔と尻の区別がつかない真っ白な生き物など、私の頭に蓄積されたデータに該当するものがない。
その、謎の物体がもう一度吠えた。
「ワオン!」
……一応、こちらへ顔を向けてはいるらしい。吠えた瞬間ほんの少しだけ舌らしきものが見えた。
鳴き声と尻尾らしいものがピョコピョコと動いているから察するに、おそらくこの毛玉は犬に該当する生き物らしい。
ハッハッハ、と荒い息を吐きながらこちらへ向かってきた毛玉は、ベロンと私の口を舐めた。
――汚い。どれだけの細菌を私に付着させるつもりだ。
きっと顔を歪めただろう私を見てか、傍らに突っ立った女がアハハと笑う。
「あんた、そんなに犬嫌いなの? この世の終わりのような顔してるよ」
「……人間以外の生物は完璧にコントロールされるべき存在。従って意味がないこのような行動は制約すべきだ」
当然の答えを返せば、なぜか盛大なため息が降ってくる。
そして、ぽつりとひと言呟いた。
「……あんた……なんかかわいそうだね」



