『もうすぐオープンだな』
『はい、後は従業員が慣れてくれるだけですね』
新しいかたちのショッピングセンターはオープンを控え、あとは細かな手直しや従業員研修を終わらせるだけとなった。
雅幸が土地を買収し計画したこの店は、私が日本にいる頃からインターネットで立案に参加している。
このなかに、富士美のブランドショップが入る。
そして……。
私が目だけで横を見遣れば、相変わらず富士美のレストランに灯りがついていた。
富士美によると、桃花はメニューの立案や様々な練習や仕込みの為に遅くまで残っているらしい。努力が好きな彼女ならではだが、あまり無理をして欲しくはない。
運営会社の専務の話を話し半分に聞きながら、レストランの方へ目を向けてハッと息を飲む。
照明が消えた後、従業員出入口から桃花らしい女性が出てきたのだ。
桃花がヴァルヌスに来て1ヶ月経つがその間会っていない。多忙というのが一番の理由だが、それよりも怖いのが彼女の平穏な毎日を壊してしまうこと。
お妃選定会議はまもなく開催される。議会の承認はすぐに下りるだろうが、私が不用意に近づいたせいで自ら新しい居場所を作った桃花の迷惑になってはいけないと自粛していたからだ。
お妃候補で名前が出ただけでマスコミに注目され、根掘り葉掘りあること無いことが報道される。毎日毎日追いかけられ、ちょっとしたことが大げさに伝えられる。プライバシーなどあったものでない。
そんな渦中に誰が望んで愛しい人を放り込みたいだろうか。



