Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




薄汚れた裏路地のアパートで、桃花が去った後にやっと祖父と議長の言葉を聞けた。


『……それでは?』


『はい。カイ殿下、わたくしが責任を持ち桃花様をお妃選定会議へ推挙させていただきましょう』


議長が改めて真剣な面持ちとなり、胸に手を当てて軽く頭を下げる。そして、彼は国王を見て微笑んだ。


『もっとも、わたくしが立ち回らずとも、どなたかの一存で決まりそうな気は致しますが』

『さすがに議長じゃの。ワシの気持ちをよく解っておる』


かっかっか、と笑ったお祖父様は、穏やかな目をして窓の外を眺めた。


『……息子のグスタフが苦しんだぶん、孫のおまえには幸せになって欲しいのじゃ。じゃから、どんなひとか見極める必要があった。老い先短い老人の老婆心じゃが……おまえと添い遂げ、ヴァルヌスの未来を預けることができるかどうかな。
そんな心配など無用であったが』


試したことに関しては後悔等ない、とお祖父様は呟いた。


『桃花どのにやったのは……王妃じゃったワシの妻が作ったサシェじゃ。グスタフが幼い頃に将来の嫁にと……弥生が嫁いできた時に渡したものだが、弥生どのがワシに託したのじゃ。桃花が嫁ぐなら持たせてくれ、と。心配いらぬよ、カイ。お祖母様も弥生どのも桃花を受け入れてくれたのじゃからな』


安心して迎え入れるがよい……夕日に染まったお祖父様の微笑みは、涙を流しながらも……今までで一番幸せそうに見えた。