『これで私の長期に渡る留学の理由がお分かりいただけたかと。質問がございましたら、どうぞ』
解っていてわざと、質問を募る。手元にある暗殺未遂の資料はヴァルヌスの宮内大臣に長官、警察庁のトップ、内務大臣、日本の警察庁に外務省のお墨付きなのだ。
ふたつの国の警察庁に外務省や宮内庁が絡む確かな資料に、初めて目にするいち記者が口を挟めるはずもない。
しばらく咳払いすらない沈黙が続いた後、遠慮がちに手を挙げたのは国内最大手の新聞社の記者だった。
『不躾ながら、ご質問をさせてください。インターネットで流された動画もありますが、あれは真実ということでしょうか』
『嘘偽りない事実です』
『国民の目を欺くための、自作自演という疑惑もありますが』
やはり、そうきたか。分かりやすい叩きの意図に、自然に口の端が上がる。
『自作自演でああまで出来たらすごいですね。まるで映画ではありませんか。ですが、あいにく私は俳優を目指しているわけでもありませんし、あんな大掛かりな仕掛けを準備する時間も、ましてやお金もございません。
あんなことをする時間があれば、居眠りします。それなら無料ですからね 』
私の飛ばしたジョークにあちこちから苦笑いが漏れる。
ヴァルヌスは医薬品やレアメタル等で裕福ではあるが、だからといって王室が金持ちというわけでもない。それを揶揄すれば、解ったという空気が流れた。
『つまるところ、私はそれほど時間も予算もございません。私が得た収支は資料にある通り、微々たるものです。日本にいた頃は特に一般人として暮らしていましたから』



