雅幸はえらくこのフランクになついてた。やつの軽薄な態度はおそらくこの男の影響を多分に受けている。


『ちなみに、予定されている質問はこれな』


フランクの渡してきた紙を受け取り眺める。こういった会見はあらかじめ、記者団からの質問が前もって知らされているし、提出された疑問すべてに回答をすることはまずない。予定調和と言えばそれまでだが、受ける側も相応の準備が必要なものだから仕方ない。


『やはり、リークの内容が来ているな』

『留学に関してですね』


アルベルトはその部分に付箋紙を貼ると、更に重要な部分をマーカーでチェックを入れる。


『記者からの質問で答える形というより、前もって表明された方が心象は良くなるかと』

『もとより、そのつもりだ』


控え室のソファに腰を落ち着けながら、アルベルトやフランクとともにチェックする。


その際、すぐそばで控えていたアレックスが報告してきた。


『殿下、ご希望の資料がすべて準備できましたので、エリィに記者団の分を用意させます。ご異存はありませんね?』

『……ああ、頼んだ』


一瞬、本当に良いのかという葛藤が浮かんだが、すぐに思い直して首を縦にふる。


今夜、私を弾劾する内容の特別番組が放送される。わざわざ家族が揃うゴールデンタイムに狙いすませたように編成されたそれは、徹底的に私を扱き下ろす内容とエリィから聞いた。


(……必死だな、タヌキめ。だが、先んじたこちらの勝ちだ。あんたには相応の罰を受けてもらう)


記者会見開始まで――あと30分を切っていた。