『大丈夫だから、そのままジッとしているんだ』
子ども達を両手で抱きしめて、なるべく見えないようにして隠す。アルベルトも渋い顔をしながらも、私の後ろで子どもを腕の中に抱き込んだ。
子ども達には無限の未来があるし、第一無関係な彼らを巻き込む訳にはいかない。
事情があって家族と暮らせないのに、知らないうちに命まで奪われるという理不尽な終わり方など許さない。
怯えて震える子ども達の身体を抱きしめる。安心させるために、子きつねの話を話して聞かせた。
それだけでなく、日本で知った昔ばなしも語る。恐怖で青ざめていた子ども達も、日本独特のファンタジーに興味を持ったようで。少しずつ顔色がよくなっていく。
寮母も私の話に触発されたか、青ざめたままだが気丈にも歌を歌い始めた。それは、ヴァルヌスの子どもに人気のマンガのキャラクターソング。少しずつ、歌いだす子どもも出てきた。
「……わかった。そのまま続けてくれ」
アレックスがレシーバでの会話を終わらせ、こちらを見て淡々と報告した。
「……仲間がスナイパーの位置を特定終了。すぐに狙撃します。なるべくなら耳を塞ぎ目を閉じていてください」
アレックスの言葉を受けて、寮母に指示し子ども達の目をつぶらせる。
私はあえて目を見開き、すべてを見守ることに決めた。 中途半端な覚悟でタヌキと戦う訳ではないからだ。
その直後――
パン、と何かが破裂したような音と。その残響らしい音が谷間の空気に響いていく。
グラリ、と灌木が揺れ、人影が岩肌から滑り落ちていくのが見えた。



