狙撃されるとなると厄介だ。
弾痕の角度から弾道を計算し、スナイパーの位置を予測は出来る。
だが、“周囲を崖に囲まれた森と山岳地帯”というこちらにとって圧倒的に不利な条件がある。
相手が身を隠すにはうってつけなのに、こちらは相手から丸見えなのだ。
『エリィ、車を動かせ。AAポイントまで来い』
アレックスが無線で素早く連絡を取ったのはエリィにだった。念のためだとアレックスが木立に車を隠してあったが、どうやらそれは正解だったようだ。エリィは車の中で待機していたから、兄の連絡を受けてすぐに動くだろう。
その間にも、二度の銃撃があった。
アルベルトの誘導で子ども達を逃がすために施設に戻そうとしたが、その瞬間にドアに一発。森へ逃がそうとすれば、足元へ更に一発。
つまり――下手に動けば容赦なく撃つという警告だ。
見えない檻に入れられてしまったも同然だった。
(いったいどうすれば……)
怯えて泣き叫ぶ子ども達を宥めながら、自分の無力さに歯噛みするしかない。
アレックスは冷静そのもので少しも慌てず、油断することなく周囲への警告を怠らない。やはりこういう修羅場には慣れているのだろう。
私も王族としてある程度の訓練は受けている。日本でも極秘に射撃場で練習をしたりした。
とはいえ、正式な軍人としてではない。こういった非常時の対処法は学んだが、やはりマニュアルはマニュアルでしかなく、実戦経験を積んだ人間に敵うはずもなく。
アレックスの指示通りに、今はただ静かに待つしかなかった。



