施設から出て、子ども達の見送りを受けながら踵を返す。あの男の子は最後までよくなついてくれて、弟のように可愛く思えた。
私の着ているスーツの端を持ち、寂しそうにうつむく彼。寮母に失礼だと叱られたが、私は構わないと彼女を制してその場でしゃがみこんだ。
『また、機会があれば来るから。それまではいい子にしてるんだぞ』
『ホント? ホントに来てくれる?』
ぱっと顔を上げた男の子の目は真っ赤で、鼻水すら出ている。私は微笑むと、ハンカチを取り出して涙と鼻をぬぐってやった。
寮母が恐縮していたが、不思議と汚いとかは思えなくて。たぶん、桃花の子ども好きの影響だなと胸があたたかくなる。
『ああ、約束だ。必ずまた来る』
彼の頭を撫でながら約束すると、ようやく涙を止めて遠慮がちに笑う。約束だぞ、と日本独特の指きりを教えて交わした後、今度こそ後にするため踵を返す――その瞬間。
アレックスが素早く動いて私を庇う。すると、立っていた場所の石畳がビシッとはぜた。
「!」
「お静かに――スナイパーが狙撃してきましたが、今のはただの警告です。おそらく、子どもたちを人質にしたのでしょう。あなたの代わりにいつでも子どもを撃てる、という意味で」
子ども達に聞かせたくないからか、アレックスは日本語で簡潔に説明をしてきた。
「スナイパーまで配されていたのか」
「予測はついておりました。ですから、こちらの手の者が既に対策を取っていますが予想以上の手練れです。排除には時間がかかるやもしれません」



