こちらがメニューです、と差し出されたバインダーを受け取り、テーブルの上で広げる。
そこに記載されていたのはメニューだけでなく、警察庁からの捜査に関する情報。
バーク卿に話したのと同じ情報を、既に警察にも提供してある。疑惑のみの時点では単なる憶測に過ぎないから、事件と判断できる材料を十二分に揃えてから提供した。
無論、シュトラウス公爵の息の掛かった上層部が握り潰す可能性もある。完全に信頼できる警部に話を持っていった上に、パッシィ兄弟の後ろにある組織の圧力も掛けて余計な口出しを封じ込めさせた。
パッシィ兄弟はあれでも国際的なある組織の構成員だ。公的ではないが、警察では対処しきれない裏や闇の案件にしごく強い。正当な手段で対抗できない相手ならば、こちらも歯には歯をでいくしかない。
無論、人を傷つけたり命を奪うような非情な手段は一切使わない。それだけは徹底させることを約束してある。
あの、地方の小さな橋で起きた転落事故。マスコミはおそらく大した事件でないとほとんど扱いもしなかった。センセーショナルな出来事ではなかったし、何よりシュトラウス公爵の圧力が掛かったからだろう。どの新聞やニュースでも、あってわずか数行の簡易な記事でしかなかった。
だが、それこそが迂闊だと言える。
警察の正式な捜索が始まり、橋の調査や検査も進んでいる。手にしたのは途中経過だが、十二分に満足できる結果が出ていた。
『……なるほど』
ふ、と口元が笑うのを止められない。
おそらく、これは反撃の狼煙となるだろう。大いに期待を込めて、富士美のメニューを選び始めた。



