当時からへらへらしていた雅幸は、誰彼構わず愛想を振り撒きまくってた。同じ5歳児だったのに。


『やあ、久しぶりだね~カイくん』

『……』

『あれ、もしかして僕って嫌われてるぅ?』

『……別に』


再会時の会話がこれ。胡散臭げな笑顔や物言いは、当時から全く変わらない。甘い物好きもだが。


『そんなに欲しいならあげるよ』


午後のお茶会で物欲しそうな目でじっと見据えてきたから、仕方なくガトーショコラをそのままあげれば。雅幸はわかりやすいくらいに目を輝かせる。


『わ~い! いっただっきま~す』


3歳時か! という呆れたツッコミはさておき。上機嫌の雅幸は、はちみつを紅茶にドボトボ入れながら突然話をする。


『カイ、日本語習い始めたの?』

『そうだよ』

『う~ん……やっぱりあの女の子のためだよね?』

『……だから、なに?』


雅幸に知られたところで、母上が里帰りを許されない以上はどうしようもない。


けれど、半分はちみつになった紅茶をイッキ飲みした雅幸は、ぷはあと息を吐いてこう言った。


『よかったら、僕の帰国に合わせて一緒に日本に行く? もちろんお忍びになるけど』