バーク卿のそばには第一秘書が控えている。どうやら、今回の会食はそれなりに重要視されてるようだ。
招待した以上は接待する側はこちらなのだから、バーク卿にはリラックスして食事を楽しんでいただく必要がある。彼はあまり食事に頓着しないタイプだが、だからこそ生え抜きの料理人を用意した。
借りきった部屋でテーブルの向かい合わせに腰を落ち着けた私は、メニューを手にバーク卿に訊ねる。
『食前酒はいかがされますか?』
『普段はポートワインしか飲まなくてね。実はあまり詳しくないのだ。君に任せるよ』
なるほど、バーク卿らしい発言だ。
ポートワインは他のワインよりアルコール度が高いから、一度開封しても保存が効く。彼はやはり実用的なものを好むようだ。
『そういえば今日は特別なメニューとうかがってる。楽しみにしているよ』
バーク卿から、牽制とも取れる言葉をいただいた。先にメニューの件を出されるとは、やられたと唸りたくなる。
彼は、食前酒のチョイスを後に出るメニューと合わせ評価をするつもりだ。ポートワインしか飲まないというのは本当かもしれないが、食品販売の会社も経営する彼が取り扱う商品の知識を持たないはずがない。
つまり、ひらたく言えばバーク卿は私を試している。
これは、迂闊な選択などできないなと気を引き締めワインリストを眺めた。



