Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




母上が諌めてくるのは親として当然としても、それでもこれほどの怒りを抑えるのは我ながら難しかった。


桃花の命の危険があった時と同じ。いや、今は大人になったぶん厄介だ。許されるならば、あのタヌキを今すぐ八つ裂きにしてやりたい。 そんな物騒な考えを抱くほど、ふつふつと湧く怒り。手のひらを握りしめ過ぎて爪が食い込むが、痛みなど感じなかった。


『……わたくしは、桃花さんにも同じ思いをして欲しくはないのです』


母上が初めてはっきりと桃花へ言及された。そのことは私の激情を冷ますのに十分で、スッと頭が冷静さを取り戻していく。


『もしもあなたが今すぐ彼女を迎え入れるならば、わたくしは反対せねばなりません。ただの一般人である彼女の身の安全を考えれば、そうせねばならないからです』

『……はい』


その点は私も素直に頷くしかない。10年異国にいた私には、まだ何の力もない。雅幸が土台を築いてくれてはいたが、それを生かすも殺すも私次第ということだ。


『わたくしが桃花さんを迎え入れるのに賛成する条件は、彼女が安心してこちらで暮らせるようにすること。そして、何があっても一生彼女を愛して護り続けること。それだけです』


ほとんど許しを得たも同然の母上の条件だが、だからこそ失敗は許さないという厳しさもある。私は顔をあげ母上へきっぱりと宣言した。


『1年で決着をつけます。アルベルトも協力をしてくれますから、議会と宮廷の膿を出しきってみせます。母上が再び悲しまないように。そして、桃花を泣かせないために。私が全てを変えてみせます』