Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編





『こうして家族で食事を取れるのはとても有難いことね』


まるで私の胸中を察したように母上がおっしゃるから、そうですねと相槌を打った。


『父上がそのように変えて下さったおかげですね』

『……そうね』


母上はとても美しい所作で食事を頂く。もともと育ちのいいお嬢様だったが、異国の王宮に馴染むには相当努力をされたのだろう。


母上はカトラリーをそっと置くと、長いまつ毛を伏せて小さく息を吐く。


『……いずれ口さがない誰かから知られるよりは、わたくしから直接あなたへ伝えておいた方が良いと思います』


まっすぐに伸びてくる母上の視線に、自然と緊張感が高まる。きっと私にとってもよくない知らせともなる話は、聞くにはあまりに辛いものだった。


『あなたの想う人にも同じことになって欲しくない……だから、言っておきます。
本当ならばこの席にはもう一人、座るべき人がいたの……。
順調に生まれていれば、あなたの2つ上の兄か姉だった』

『……母上……まさか』


自分から言うにはあまりに残酷な内容に、それ以上言及できずに口をつぐむ。母上もいつもの温かな笑みなど欠片もなく、沈んだ様子で告げられた。


『そう、あなたには本来2年先に生まれたはずのきょうだいがいた……でも。わたくしのお腹に留まれずに……3ヶ月目で流れてしまいました。
そして、それを目論んだのはあのシュトラウス公爵だとはっきり断言できます。被害妄想等ではなく、確かな証拠も揃っています。
ですからあなたも桃花さんを妃にするならば、相当な覚悟で彼女を護りなさい。彼女がそんな悲しい目に遭わないように』