「……オレは、あの雪の日。アンタがあの女にひどい目に遭わされるのを見ていられなかった。だから、あの女を突飛ばして雪から出そうとしたが……結局小さすぎたオレは一人では無理で、他人の手を借りたのが悔しかったんだ。
あの女はずっと呪詛のように、アンタへの恨み辛みを呟いてて……きっと、後でアンタへ何かをするってわかってた」
過去の告白は懺悔と同じ。事実を明るみにし、自分の不甲斐なさをあぶり出す。
桃花にすれば今さらな言い訳かもしれないが、全ては彼女を決断させるため。日本で生きていくか、私のもとへ来るのか、それとも違う未来を描くのか。そのターニングポイントとなるのが、今回の話し合いだろう。
そのためならば、羞恥心など捨てて彼女に全てを明かしたい。
とはいえ、無理なことはあった。
やはり桃花からは当然の指摘が飛び出す。
「なぜ、わかってたなら私に話してくださらなかったんですか?」
「王子とはいえ、たった3つのガキに何が出来る?
その時だって何となく不安になっただけで、何がどうなるかなんて想像もできやしない。
それに20年前は今よりずっと身分に厳しかった時代だ。異国の王子が一般庶民に話しかけるなんて許されない。
だから、母上に無理を言って年に一度……盆の里帰りの時だけ、様子を見に行かせて貰っていたんだ」
いくら桃花を守りたかったとして、当時たった3つの異国の子どもにできることなど知れている。母に頼んだとしても、王族という身分で自ずと制約がついてしまう。
とはいえ、桃花から臆病者と謗られても仕方ない。自分でも全力を尽くしたとは言い難かったのだから。



