厨房の忙しくない時間帯、その片隅を借りてオリジナルレシピのチーズリゾットを作る。
王宮では母上が手ずから料理を作って振る舞って下さっていたから、私も自然と料理を好きになれた。
お陰で日本に来た際には専用の料理人を置く必要もなく、アルベルト達の分の食事も作ったりもした。
これは、毒殺という恐れがなくなっていい。市販の材料を自ら選んで購入し、自分が作って食べるのだ。一番安全で安心できる食事方法だった。
(そろそろ桃花が起きる時か……)
時計を見れば昼も過ぎている。さすがに空腹で起きるだろう、と鍋と皿を持って部屋に戻れば、やはり桃花は起き出していた。
寝ぼけ眼でぼ~っとしている様は、その無防備さも相まってとても愛らしい。すぐに抱きしめめちゃくちゃにしたい衝動を抑えながら、出来立てのチーズリゾットを木のスプーンで掬い桃花の口に差し出す。
「腹、空いただろ? とりあえずこれを食べておけ」
「はい……?」
微妙な返事をした桃花は私が差し出したスプーンを見て、不思議そうな顔をした後にパクリと一口。たぶん、寝ぼけてるから素直になったんだろう。
「……ん、美味しい」
もっと、とねだるように上目遣いをする桃花は。どうやら私の心臓を停めたいらしい。めったにない甘える仕草が可愛くて、頬が緩むのをおさえられない。
ぱくん、と3口目のリゾットを食べた桃花は、飲み下してから口にした。
「これ、生米から作ってますよね? それと、白ワインの香りと生クリームのコクがとても美味しいです。メインのチーズはゴルゴンゾーラかな?」
驚いたことに、たったそれだけで桃花はレシピの内容をピタリと言い当てたのだ。 驚くと同時に、嬉しさも増した。



