どうやら桃花はオレの髪の拭き方が気に入らなかったらしい。バスタオルを奪われて、丁寧に拭かれた。
彼女の世話をし慣れた手つきに思わず妹のことを訊ねてみたが、さほど気構えることなく話してもらえた。ドライヤーが嫌いだとか、妹と同じ扱いがちょっとだけ不満を覚える。
オレがドライヤー嫌いとバレてしまったが、桃花の笑顔が見られたからよしとしよう。苦手なものを列挙されて、情けない男だと言われてるようで気分が沈むが。拗ねた子どもになって、ちょっとだけ彼女に甘える。
たかが髪の拭き方ひとつでも、個人の違いが出てくる。一緒に暮らした期間はあっても、同じマンションに住みながらあまり接点はなかった。だから、桃花の細かな習慣ややり方は知らない。
こうして、少しずつ少しずつ知っていきたい。時間は足りないかもしれないが、1週間という限られた時間で知って。互いの妥協点を見つけて……。
いずれともに暮らすなら、しっかりと練習はしないとな、と想像ばかりが膨らむのは仕方ない。実際は侍女や何かしらの役職者の世話を受けるが、プライベートでは2人だけで過ごせる部屋も用意したい。
(王宮や宮廷のあり方も桃花が来るまでに変えておこう。母上のために父上が王族の家族で暮らせるように変えたように、オレも桃花が間近にいられるように)
そう思いながら、桃花に身を委ね目を閉じた。



