「わ、私もちゃんと払います~! 見くびらないでくらさい~!」
「うるさい、酔っ払い。少し黙ってろ」
支払いの段になっても絡んでくる酔っぱらいをいなしなから、どうにか清算を済ませて店を出る。
そのままだとふらついて危険だし、誰かに襲われないとも限らない。
桃花に自分の魅力を悟らせないように仕向けてきたのは自分だが、彼女はあまりに無防備過ぎる。
本当は桃花に告白したい輩などごまんといた。だが、全てを排除し潰してきた。オレの醜い独占欲のため――手の内の人間を使って。
それだから、桃花は自分がモテないという劣等感を抱いている。本当は、妹などより惹かれた男がどれだけいたかなど知るよしもないだろう。
妹の桜花は見た目にも華やかな大輪の花だ。例えるならバラ。すぐに目を惹き香りに気づくが、間近に置いていたいものではないし香りも濃い。
桃花はすみれだろう。控え目に咲くが、仄かな薫りがただよい気持ちが落ち着く。
すみれの良さに気づく男は思ったよりも多かった。オレが報告を受けただけで、最初は小学4年。同級生の男が告白しようとしたのを阻止した。
小学校だけで6人。中学校で15人。高校で22人。それだけの男が桃花に好意を寄せた。その度にどれだけ気を揉んだかしれない。
(卑怯だと罵られても軽蔑されても構わない……どんな手段を使おうと、オレはきみが欲しかった)
そうして、今はきみの手を掴んでいる。
一度はヴァルヌスに帰るために離すが、放す訳じゃない。
オレを忘れないために、きみの中にたくさんのオレを刻みつけておこう。



