Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




公共の場で全てを明かせないとはいえ、せめて多少なりとも伝えたいことはあった。けれど、やはりオレは選択ミスをしてしまったようだ。


「きゃははは~これ、おいひいですれ~」


たった一杯のワインでここまで酔うとは……予想はしていたが、甘い雰囲気には程遠い空気に頭を抱えたくなる。


だが、酔っぱらいと化した桃花から語られたのは意外過ぎる事実だった。彼女はあの雪の日を悪夢とはとらえず、素敵な思い出として胸の中にしまっていてくれたのだ。


あの日の後に悪夢に苛まれるというのに。人生が変わるほどの影響を受けても、きみはそうしてオレとの思い出をよい記憶にしてくれていたのか。


「ね~ひどい話でしょう! 私は寂しそうな男の子に笑って欲しかっただけなのに、それ以来20年以上根に持って意地悪してきたんですから~」


桃花が事細かなことを昨日のように語ってくれるから、オレも忘れていた事柄を思い出した。


大谷の醜い嫉妬やあり得ないあれこれ。20年前の子どものしたことだから、とうに時効かもしれない。だが、やつらを取り調べ裁く人間に有用な証言となるだろう。


(二度と桃花へ悪影響を及ばさない場所へ閉じ込めてやる)


1年、もしくは2年……。


おそらく、ヴァルヌスでの『掃除』はそれくらいかかるだろう。大谷よりも遥かに手強い、政治的経済的に影響力のある相手だ。やつらの膿を一斉に出さねば、ヴァルヌスという国の未来も暗いものとなる。


そのための算段を素早くしていたが、桃花の染まる頬や潤んだ瞳に理性が焼ききれそうになる。とにかく笑い上戸な彼女が楽しそうで、微苦笑しながらもそろそろかと時計を見た。