「俺と同じ?どういうことだ?」


万里は俺のほうに向き直して、その場に座った。


「俺さ、最初にお前に手ぇ出したじゃん。覚えてる?」


「もちろん。」


「あんときはさ、確認だったんだ。俺は女のことが好きなのかなって。」


どういう意味かはよく分からないけど、今は淡々と話す万里に耳を傾けた。


「そしたら、本当にお前のことが好きになった。
俺、もともと顔立ちも女っぽくねぇし、声もそんなに高くねぇ。
だからだろうな。お前に勘違いされて、あげく「俺は男だ!」って言われちゃって。こっちは戸惑っちまうよ。」


あの告白、本気だったのか......。


え、ちょっと待てよ。


今、なんか違和感が....?


「あぁ、俺って男がちゃんと好きなんだなって....。嬉しかった。」


........ん!?


え、ちょっと待てよ?!


「お前、も、もしかして.....!?」


万里はふっと優しい笑顔を見せた。


まるで、女のような。


「女なんだ、俺。」


は、はぁぁああああ!?


俺と同じってそういうことかよ!?


「え、ちょ、え、待て!"男装女子"ってこと?!」


「まぁ、そういうことになるのかな。見かけは男で中身は女。お前と真逆だな。」


マ、マジかよ?!


"生徒会長は知ってるよ。"って生徒証明書の性別は女ってことかぁ!


そういえば、体育の着替えんとき、いつもいなかったな。


あの時も、あの時も、あの時も.....。


確かに万里が女だったら全ての謎の行動が頷ける。



「今までは女だと思って沢谷に接して、心のどっかで越えちゃいけない壁を作ってたんだ。
でも、お前が女装やめて男に戻った。
そしたら、俺、抑えてた女の感情が戻ってきちまった。」


万里は涙を流した。


綺麗な女の涙だった。


きっと苦しかったんだろうな。


越えちゃいけない壁が突然崩れて、俺が現れた。


そりゃ、避けたくもなるよな。


壁に塞き止められてた感情が溢れてる。


本当は全部受け止めてやりたいよ。


でも......万里の気持ちには答えられない。


「万里......ごめんな....。こんなに悩ませて、その上俺は......。」


「.....いいよ。こうなるの分かってたし。それに伝えられただけで俺は満足だよ。
沢谷、好きだぜ。これからもずっと友達としてな!」


万里の感情は全部、崖に落ちていった。


いや、無理矢理落とした。


落とさせたのは俺だ。


俺は咄嗟に万里の肩を抱きしめた。


「さ....わたに...」


「ごめん、これで我慢してくれ...」


抱き締めた万里の肩は小さくて女の肩だった。


「やめろよ......こんなことされたら....俺......俺は.......ぁぁぁあ」


肩を震わせ泣いた万里を俺は抱き締めるしかなかった。


万里が女だったことに気付けなかった俺の罪だ。


生徒会長、今だけ許してくれ.....。


罪を償わせてくれ。