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――暗くて深い、闇が広がる。


深い漆黒がずっと続く世界で、わたしは走り続けていた。

心臓は何度も大きく鼓動している。


息は乱れ、口の中は恐怖でカラカラに乾ききっている。

それなのに、いったいどこに水分があるのだろう。

こめかみからはジットリとした汗が頬から鎖骨へと流れていく。


ネトネトした汗が気持ち悪い。




漆黒の空間には一切の風もなく、蒸し暑さだけがわたしの体を包み込む。

出来るなら、もう走りたくなんてない。


足は棒のようになっているし、心臓も破裂しそうなくらい苦しい。



だけど、止まることはできない。






止まれば最後、わたしは追いかけてくるソレに捕まってしまう。

今だって、わたしのすぐ背後では、異様な音が近づいてきている。


ズル……。


ズル……ズル…………。





まるで、重たい何かを引きずるような、そんな音が近づいてくる。