私、榎本菜々子(えのもと ななこ)と真己は、幼馴染みということもあり、私が7歳の頃からの付き合いだった。(ちなみに真己とは同い年である。)それなのに8年しか一緒にいられなかったのは、私たちが中学二年生の頃、真己のお母さんの仕事の都合で、引っ越しをしてしまったからだ。

 真己が転校する時、私は今生の別れかのように大泣きした。でも真己はにこりと笑って「またな」と言った。
 この時の私は、「真己はもう私と一緒にいなくても平気なんだ」とか、「冷たいんだから。もうちょっと寂しがってよ」などと一人心の中で憤慨していたが、彼はこんな子供染みたことを考えていなかったのだ。
 彼は、私が思ってるよりもずっと大人だった。
 これは再会した後しばらく経ってから聞いたことなのだが、真己曰く、私が言ったある言葉がすごく励みになったそうで、ちっとも寂しくはなかったという。その言葉とは『ずっと味方でいる』ということ。これを言ったきっかけは、また後ほど。
 当時聞かれなかったとしても、あんな子供っぽいことを考えていたなんて恥ずかしい。まあ、子供だったからしょうがないのだろうけど、それでも言わなくて本当に良かった。