「ゆかりちゃん…!
アスカ、アスカ読んでくるね。」


ひどく疲れた顔をした茶髪の男の子はそう言ってばたばたと病室をでていった。


あーー、なんでこんな所で寝てて、なんでこんな頭が痛いんだろう。


それに…。


「アスカ。」


妙に口に馴染むその言葉に、私は無意識に首元に触れた。


両親の指輪が通ったネックレス。


……ん?


シャラ、と音を立ててネックレスを引き出すと、そこに通っていたのは母のものだけだった。


ーーーなんで、ないんだろう。


なんで、無いのにこんなに落ち着いてるんだろう。


まるで、初めからなかったかのように。