私は手足の拘束感に顔を顰めて目を覚ました。
「おはようさん、天翔のお姫様。」
「天津真白……」
大きなソファの上に、手足を縛られて寝ていた私は見覚えのありすぎるいけすかない顔に眉をひそめた。
「そんな顔せんどいてやー、べっぴんさんが台無しやで。」
「…私を引っ張り出すことにしたわけ。」
天翔に邪魔だから、と私はわざと検討ハズレのことを言った。
「…ハズレー。
姫さんの大事な大事な天翔を潰すため、や。」
「それが可能だと思ってるの?」
こんな男に、女をさらうような男に、そんなことができると思っているのだろうか。
「私をさらった時点で、あなたは彼らに自分の負けを宣伝しているのと同じなのよ。」
「…さすが姫さん。その言葉、痛いですわー。
あんたはんは甘い、甘いんや。
この世界は、背後すくわれたら負けや。
どんな勝ち方しても、女をさらっても、勝ちは、勝ちやで?」
そう言ってくつりと笑った目の前の男に、私は顔を顰めた。
曲がってる男だけど、覚悟はある。
そういう男が、一番怖いのだ。