年末になり、やっとゆっくりできる、そう思っていたのに。


そこそこ繁盛しているハルさんのカフェでバイトをしていると、記憶に新しい真っ赤なバイクが音を立てて外に止まった。


『ハルさん、ゆかりもらうよ!』

『そろそろ来ると思ってたよ〜』

え?え?え?


そんな軽い調子で引き渡された私は、義経君によって見慣れた場所へと連行されてしまったのである。


天翔の贅沢な溜まり場は、何時もの雰囲気とは違うざわめきに包まれていて、とにかく埃っぽい。


『ゆかり、どうせ暇だろ?』


『え、うちでゆっくりするっていう『暇なんだろ?』…はい暇です。』


義経君の謎の迫力に気圧された私は、知らないうちにそう口走っていた。


その答えに満足そうに頷いた彼は、有無を言わさず3階に連行し、埃っぽくなった何時もの部屋に私を放り込んだのである。