私はぶっすーーーーーー、と、これまでに無いくらい膨れていた。


…暖かい車の中で、ハルさんに愚痴りながら。


「お前ら、準備いいか」


外では、車に寄りかかった明日翔がなにやら声をかけている。


明日翔のよく通る声に、約100人の天翔が呼応する。


よく澄んだ冷たい空気。

澄んだ漆黒の空はたくさんの輝きを抱えて。


「今日は派手にやれ。」


その言葉に、男たちの声はさらに大きくなる。


最高潮に高まったボルテージは、そのまま音となって辺りに鳴り響く。


全く、こればかりは騒音中の騒音だ。



「まだ怒ってるのか。」

車内に戻ってきた明日翔は、困ったようにそういった。


「…………………。」


私はずっと怒っているのだ。


人前でキスをしたこの男を。