首を傾げていると、グイッと引っ張られて嗅ぎ慣れた甘い香りの中。
「なに、明日翔、どうしたの?」
股の間に座らされて、後ろから腕を回されてしまった。
もはや慣れすぎて恥ずかしいという気すら起きないほど、とにかく唐突にこういうことをしたがるのだ。
「えー、と、僕のこと忘れないでもらえます?」
不機嫌な明日翔に髪をいじられされるがままになっていると、そんな声が飛び出した。
「あ、まだ紹介の途中だったよね。」
ごめんね、とニコニコ雪ちゃんに嫌そうな顔をした黒髪の黒縁眼鏡の男の子は、口を開いた。
「…川瀬嵐です。中学3年生。
ゆかり先輩、よろしくお願いします。」